今月の提言


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9月の提言:『日本ラグビー代表とダイバーシティ経営』

先日のラグビーワールドカップで日本代表が強豪南アフリカに勝ったことで日本中が沸いた。しかしながら、日本代表の中に外国人選手が多いことに気付いたことだろう。世界の舞台で勝つには、グローバルに人材を集める必要があると思った方も多いだろう。ビジネスの世界でも同様で、まさにこの点が「ダイバーシティ経営」の本質だと思う。

日本でダイバーシティ経営が叫ばれて久しい。経産省は2012(平成24)年から「ダイバーシティ経営企業100選」としてベストプラクティス企業を表彰しているくらいだ。だが、筆者が見聞きしているところでは、ダイバーシティ経営が必ずしも円滑に推進されているとは言い難いのである(注1)。

ダイバーシティ経営を推進するのは、人材の多様性がさまざまなステークホルダーの企業価値向上に寄与すると期待されているからだ。最近、女性や外国人の積極的登用が目立ってきたのも、グローバルな競争環境下でマネジメントを変えていこうという意欲の表れだろう。だが、このように人材の多様性というと、現状では性別、年齢、人種そして健常者と障害者など属性面での多様性を意味することが多い(注2)。

しかしながら、こうした属性の多様性だけでは真のダイバーシティ経営とはいえない。各属性の中の個々の多様性が求められるのである。たとえば、女性の中の多様性、外国人の中の多様性だ。生物多様性の議論では、同じ種の中で「個体」の多様性が環境変化への適応力を高めることが分かっている。人材にも同様な視点が求められると思う。真の多様性とは、属性の多様性を超えて個々の人材の多様性を認識して活用することなのである(注3)。

さて、上述した観点から、ラグビーの日本代表の選手をみると、筆者には日本人や外国人という観点を超えているように思える。つまり、世界で勝つための選手(いわゆる個体)を選んだ結果、結果として属性と個々の選手の多様化が実現したのだと思う。これも「世界で勝つ」という共通の目的があって、それを関係者が共有していたから実現できたのだ。

日本企業の中でもグローバル展開を見据えて、外国人採用を強化している企業が目に付く。パナソニック、ファーストリテイリングそして楽天などだが、各社のグローバル展開度の違いもあり各社の人事政策も異なる。たが、これから世界で戦える個々の人材を採用しようという姿勢は共通していると思うのである。

上述した通り経産省は過去3年間ダイバーシティ経営のベストプラクティス企業を選んできた。この意味では事例は多いといえるが、はたして真の意味でのダイバーシティ経営が実践されているかといえば疑問が残る。いわゆる組織の慣性なるものをどこまで克服して現場に浸透させるかなど課題は多いことだろう。

そこで、現在ダイバーシティ経営を推進している企業も含めて、いま一度下記の3点を再確認してはどうか。
  1. ダイバーシティ経営の理念の確立
  2. ダイバーシティ理念の共有化
  3. トップのリーダーシップとコミットメント
ダイバーシティ理念の確立、再確認とその末端までの共有化によって、ダイバーシティ経営の推進がより強化されることだろう。そして、それには経営トップのリーダーシップの発揮とコミットメントが不可欠である。グローバルな環境の中で競争し新しい未来を築くには、さまざまな多様性と真剣に向き合ってそれを乗り越えて真のダイバーシティ経営を確立することが肝要だ。


注1:
「ダイバーシティ経営企業100選」に関しては下記の経産省のサイトを参照.

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/practice/

注2:
女性の役員・幹部への登用等に関しては下記の拙稿を参照.

20013年6月の提言:『ダイバーシティ経営の推進で何が変わるか』

http://www.csconsult.co.jp/teigen/1306.html

注3:
生物多様性と人材多様性の議論については下記を参照のこと.

武石恵美子「人材多様性で強い組織を」(日本貿易会月報・2015年9月号)

http://www.jftc.or.jp/shoshaeye/pdf/201509/201509_13.pdf



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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