今月の提言


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10月の提言:『消費低迷の謎に企業は3つの革新で対処せよ!』

消費の低迷が続いている。総務省が2016年9月30日に発表した8月の家計調査では、消費支出(2人以上の勤労者世帯の1世帯あたり、以下同様)は27万6,338円、前年比で実質ベースで4.6%減となった。これで6か月連続の前年割れだ。実収入が増えても消費が低迷するのは謎だという。だが、可処分所得が減少し、かつ消費性向が低下していれば消費の低迷は当然の結果だ。

家計調査によると実収入は2005年に比べて2015年には微増しているが可処分所得は減少している。社会保険料などの「非消費支出」増が可処分所得を圧迫しているのだ。加えて、消費性向まで低下していれば、マクロでみて消費が活発になるわけがない。

具体的には、家計調査によると、勤労者世帯の平均消費性向は、2015年平均の73.7%から2016年6月は69.4%、 7月は69.3%と連続して大きく低下した。昨年に比べて最近は4%ポイント以上も消費性向が 低いのだ。つまり、消費者は4%以上も所得から貯蓄に回す割合を増加させている。従来は円安による物価上昇で生活防衛に走ったと説明されていたが、原油価格の下落と円高により物価は下落しているため単純な生活防衛では説明しきれない。 そこで、最近仮説として消費性向の低下は先行きの年金不安による消費抑制が原因だといわれている(注1)。

上述したように実収入が増加しても可処分所得が減少し、先行きの不安から消費性向まで低下していればマクロでみて消費が活発になるわけがない。可処分所得も年金不安も政府の政策によるものだが、だからといって企業が政府の政策頼りでは未来を描けないのである。

国内消費が停滞している中で、次の3つの市場にどう絡むかが今後の企業の盛衰を分けるといわれている。
  1. AI, IoT及びICT市場
  2. グローバル市場
  3. 高齢者市場
上記の3つの市場の重要性は改めて説明するまでもないので割愛する。ここでは、消費低迷を打開するためのモノやサービスの次の3つの革新をお薦めしたい(注2)。
  1. 高付加価値革新
  2. ターゲット革新
  3. 売り方革新
上述した3つの革新は、衰退市場あるいは低迷する市場で成功したモノやサービスの事例から分類したものだ。

まず、高付加価値革新は、従来の発想を変えた高付加価値商品づくりでヒットさせるものだ。逓減する袋麺市場を活性化させた東洋水産の「マルちゃん正麺」が事例としてあげられる。街のラーメン屋に近づけるためにフライ麺からノンフライに替えて市場を蘇らせたのである。鳴海製陶の「クックボウル」も調理後そのまま食卓に出せるように直火にかけることができるお皿を開発しヒット商品となった。象印マホービンの「極め羽釜」「南部鉄器・極め羽釜」はご飯がおいしく炊ける高級炊飯ジャーでヒットした。10万円以上する炊飯器が高齢者層や内食志向のこだわり層に受け入れられた。このようにな従来の発想を変えた商品開発事例が消費低迷下のヒット商品・サービスづくりのヒントになるだろう。

次に、ターゲット革新は、衰退市場の商品を従来のターゲットからずらすことでヒットさせるものだ。コクヨS&Tの「鉛筆シャープ」は鉛筆の芯に発想を得た太い芯のシャープペンシルで、ターゲットを子どもから大人にすることでヒットした。ワーナーミュージック・ジャパンは低迷するCD市場で「OPUS ALL TIME BEST 1975-2012」をヒットさせた。映画館でのライブ映像上映、テレビでの予告編の報道等を活用することで従来のコアファンからグレーゾーンへの拡販に成功したのである。また、ラジオ体操といえば夏休みの子どもを思い出す。ラジオ体操は2011年の東日本大震災後、誰でもできる運動として大人向けに復活した。美容・ダイエット本のベストセラー化と並行して20代から30代の女性の美脚、くびれ効果で支持を集めたのだ。

最後に、売り方革新は、従来型の化粧品訪問販売市場が逓減する中で、ノエビアは美容サロン「ノエビアビューティスタジオ」を開設することでアドバイス機能強化とコミュニティづくりに成功し業績を回復させた。かつての珠算塾も縮小する市場の代表例だ。イシドが直営及びFCで展開する「石戸珠算学園」「いしど式速算義塾」他は、楽しさと子どもの能力開発を訴求し従来の珠算塾から変革した。現在、直営校、加盟校を含め全国170教室のチェーンとなった。

以上、衰退市場での成功事例をもとに3つの革新について述べた。衰退市場を消費低迷と読み替えれば、ヒットを生むヒントがあると思う。製造業もサービス産業も3つの革新の具体案を練り実行することで、近未来に光明がみえてくるのではないか。


注1:
消費性向低下についての仮説は,下記の「消費の謎,低下する消費性向:経済の羅針盤」を参照のこと.

http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/288086/

注2:
3つの革新の事例に関しては下記及びweb上の記事情報等を参照した.

週刊東洋経済eビジネス新書『衰退市場でのヒットを飛ばせる』(東洋経済新報社,2013年5月)



【竹生孝央(ちくぶ・たかお)】(2011年より「孝央」と改名しました)

 


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